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荻窪で寄り道 6次元 前編

荻窪駅からほど近い雑居ビルの1と1/2階に、カフェ「6次元」の入り口はある。

まるで茶室に続くにじり口のような狭い階段を上がって中に入ると、
木のぬくもりが感じられるほら穴のような空間が広がっている。

窓から差し込む光が穏やかで、開店から閉店までをここで過ごしてしまう客がいるというのも素直にうなずける心地よさだ。

よくよく店内を見渡してみると、一見雑多に置かれたオブジェや本棚の本、
そして陶器などから知的な匂いがほのかに立ち上り、
どことなく"ただのカフェではないぞ"という雰囲気が漂ってもいる。

「店名の"6次元"には、異次元のような空間にしたいという思いを込めました。

6という数字は"初めの完全数"と言われていて、ハチの巣も雪の結晶も6角形でできています。6人以上知り合いを介すと世界中の人々とつながることができる"6次の隔たり"も6という数字がキーですよね。

実際、このお店では不思議なことがたくさん起きるんですよ。
小学校の同級生に偶然再会したり、20年以上会っていなかったいとこと隣同士の席に座ったなんてお客様もいらっしゃいました。

人との距離が近くて、世界の小ささを味わえる場所だと思います」(オーナー・道前さん)

店内にある時計はすべて止まっている。柱時計の一つには、時間どろぼうが登場する『モモ』を抱いたものも

店内にある時計はすべて止まっている。柱時計の一つには、時間どろぼうが登場する『モモ』を抱いたものも

作家自ら「ああ、あの本はまだなかったか」と言って、本棚に足してくれることもあるそう

作家自ら「ああ、あの本はまだなかったか」と言って、本棚に足してくれることもあるそう

珈琲(500円)とのりトースト(400円)。パンでできたいそべ巻を食べているような気分になるどこか懐かしい一品

珈琲(500円)とのりトースト(400円)。パンでできたいそべ巻を食べているような気分になるどこか懐かしい一品

荻窪で寄り道 6次元 前編

カフェとしての通常営業は、金・土・日の週末のみ。

その他の日には、第一線で活躍する作家や詩人、文化人や一般の人たちの主催する読書会や勉強会、出版記念パーティーなどのイベントが行われている。

2008年のオープン以来、クリエイターの発掘や新たな作家同士のつながりを発信し続け、今や雑誌や文芸の編集者たちや海外メディアからも注目される存在となった。

カフェを運営しているのは、中村邦夫さんと道前宏子さん。
中村さんは旅や美術系の番組を制作するフリーのテレビディレクター。
道前さんは絵本雑誌などでライターとして活躍中だ。

「この店を始めようと思ったのは、新しいメディアを作ってみたかったから。
最初から新しい文化を発信するような場所にしたいという思いはありました。

詩人の谷川俊太郎さんや作家の田口ランディさんをはじめ、
たくさんのクリエイターの方々が自主的に朗読会や読書会を開いています。

また、毎日と言っても過言でないほど、作家の卵たちが僕のところに作品を持ちこんでくるので、いいなと思えばどんどん知り合いの編集者に紹介したりします。

誰からも何ももらってはいないですけど(笑)、プロデューサーのような仕事がメインになりつつあります。いいと思ったものを発信する力は、開店当初に思い描いていたものに近づいてきたかなと思います」(中村さん)

カフェとして自由な時間を味わえるだけでなく、新たな出会いまで見つけられそうな予感。
春風に誘われるまま、6次元の扉を開けてみてはいかがだろうか。

Shop information

店名:6次元(http://www.6jigen.com/

住所:〒167-0043 東京都杉並区上荻1-10-3 2F

TEL:03-3393-3539

営業時間:金・土・日 15:00-22:00

photo_naomi kinoshita
text_miwako matsuzaki
edit_yu koyanagi