平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン Daily Premium Calendar

「少女漫画」の世界観に浸り、純粋な気持ちを思い出す場所 いがらしゆみこ美術館 前編

岡山県の倉敷に、「いがらしゆみこ美術館」はある。イラストが展示されたギャラリー、貴重な作品を収容したライブラリー、ドレスの貸し出しサービス「お姫様体験」など、少女漫画の世界を存分に堪能できる場所となっている。同美術館の副館長ミツシロさんにお話を伺った。

「入場ゲートを一歩入ったら別世界! という体験をしてほしいんです。なのでうちは『いらっしゃいませ』ではなく、少女漫画の世界へようこそという意味で『こんにちは』なんです。

2階では懐かしいいがらしゆみこグッズを展示しているのですが、あるとき上から悲鳴が聞こえてきて、事故でも起きたのかと思って見に行くと、お客様が『この水筒、子どものころ持ってたー!』って(笑)。そのもの自体はただの古い水筒なんですけど、これだけ喜んでくださるファンのエネルギーは、私を奮い立たせる原動力ですね」(副館長)

観光施設が並ぶ美観地区にある同美術館。花の季節は、玄関前はバラの植え込みも

観光施設が並ぶ美観地区にある同美術館。花の季節は、玄関前はバラの植え込みも

秘蔵ライブラリーには貴重な蔵書が並び、自由に読むことができる。手塚治の作品も揃えるなど、男性も飽きさせない

秘蔵ライブラリーには貴重な蔵書が並び、自由に読むことができる。手塚治の作品も揃えるなど、男性も飽きさせない

「お姫様体験」(基本料金1,000円)は人気のサービス。ドレス姿で周辺を散策することもできる

「お姫様体験」(基本料金1,000円)は人気のサービス。ドレス姿で周辺を散策することもできる

「少女漫画」の世界観に浸り、純粋な気持ちを思い出す場所 いがらしゆみこ美術館 前編

オープン当初から大切にしているコンセプトがあるという。

「一期一会を大切にしています。来場者は観光客の方が多いため、これきり一生会うことはない、逆に言うと、そこで嫌な気持ちになったら一生心に残る傷になる。だから一生懸命におもてなしをしなければと思います。

人が『やってほしい』と思われることは、できるかぎり実現できるように心がけ、スタッフにもそのような気持ちを持ち続けるように教育しています。当美術館に来てくれた人が、倉敷や岡山の旅を良かったねと思ってくれたらうれしいですね」

倉敷は400年以上前から物資輸送の中継地として栄えた街。江戸や明治時代に活躍した建造物は美術館や博物館と姿を変え、現在では文化的見どころが多い観光地として知られる。そんな倉敷にいがらしゆみこ美術館があるわけは、「倉敷で美術館めぐりをするのが大好きで、また、日本に初めて孤児院が設立された街でもある」といういがらしゆみこの思い入れから。名誉館長はいがらしゆみこ本人が務める。

「当美術館のオープン当時、いがらしゆみこのサイン会で私はその横にアシスタントとしていました。30歳前後のお客様が、並んでいるときは普通だったんですけど、いがらしゆみこと対面した瞬間に号泣されて。震えながらいがらしの手を握り、先生の作品にどれだけ励まされたか、勇気付けられたかを涙ながらに語っていらっしゃいました。

その光景を見たとき、いがらし先生はすごいなと思ったと同時に、この美術館をやっていて良かったという想いが沸きました。女性の夢を叶えてあげられたような気がしたんです。当美術館からいいものを発信して、ひとりでも多くの人の夢を叶える手助けをしたいなという想いが、未だにあります」

漫画家いがらしゆみこのデビューは1968年、高校3年生のとき。40年以上経った今も現役で執筆を続ける、少女漫画界の巨匠だ。代表作である『キャンディ・キャンディ』(原作:水木杏子/1975年~1979年)は、学園ものの少女漫画が主流だった当時、外国を舞台にした作品は異例だったという。

『キャンディ・キャンディ』の主人公キャンディは孤児院出身。そんな少女が人生を切り開き、将来の夢に向かって突き進むという当時にない斬新な企画と、何より圧倒的な画力と描写の細かさがヒットした要因ではないかとミツシロさんは分析する。

「少女漫画を読むと、10代の純粋な気持ちを思い出したり、涙を流すようなシーンでは心が洗われる。当美術館に来る人も、そのような体験をしているのかもしれません。

皆さんの心がピュアになるように、そして、いがらしゆみこという偉大な漫画家がいたことを後世に伝えていくためにも、さらに施設を充実させていきたいですね」

「いがらしゆみこ美術館」は、自分の中にある純粋な気持ちを再発見したい大人にぴったりの場所かもしれない。

Shop information

店名:倉敷少女漫画美術館「いがらしゆみこ美術館」(http://www.aska-planning-design.co.jp/museum/museumtop.html

住所:岡山県倉敷市本町9-30

TEL:086-426-1919

営業時間:10:00~17:00(GW・夏休みは9:00~18:00)

photo_daigo yokota
text_yui tanaka(press labo)