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「打ち上げ現場はまさに"戦場"」 煙火店 丸玉屋 代表取締役 小勝敏克

花火の製作から、花火ショーの演出・プロデュースを行っている丸玉屋。得意とするのは、花火と音楽、照明を組み合わせた花火ショー「花火ファンタジア」だ。

企画が動き出してから、製作、プログラミングなどの作業を経て完成するまで、およそ2ヶ月から6カ月にわたる大仕事。夏場の繁忙期には、ほぼ休みなしで昼夜ひたすら作業に追われるという。

「弊社の従業員は25名、常駐のアルバイトを入れて約45名です。花火大会の規模によっても違いますが、現場作業は設営を含め6名から100名ほどのスタッフで実施します。茨城工場では火薬班、資材班、機材班チームがそれぞれの業務を担っており、花火ショーの実施には、花火ショーのデザイン、プログラマー、現場監督、オペレーターなど、一人が色々な役回りを掛け持ちすることもあります。

作業の流れは、どんな花火大会でも大体同じですね。
日程と打ち上げ会場が決まったら、まずは『日本の四季』というような大テーマを決定します。次に音楽を決め、予算の範囲内でどんな花火(サイズ、種類、現象、色)を何発使うのかをリストアップ。さらに、花火会場図面を作成し、そこに立ち入り禁止区域を設定したうえで、様々な種類の花火(サイズ、色、形、現象)をどこに何発設営するのかシミュレーションし、レイアウトを決めていくという作業を行います。

次にコンピュータを使って音楽とシンクロさせるプログラミング作業へ。
それぞれの音楽の表情を理解し、リズム、メロディ、ハーモニーに合わせて、どのタイミングでどのような花火を打ち上げるかをプログラムします。この作業は非常に緻密で
プログラマーのセンスが問われます。花火の種類は、地上7メートルほどの低高度のものから300メートル近く上がる尺玉(30cm玉)など高高度のものまでさまざま。これらを組み合わせて、より広く立体的な花火演出が出来るよう考えます。

基本的には、プログラマーが会場のレイアウトも考えます。自らが花火会場の地理的条件を理解できなければプログラムも出来ません。少なくとも現場で5年以上の経験が必要でしょう。

立入禁止区域が妥当か、安全が確保できるか、斜めに打ち出す花火の距離が安全を確保するうえで十分かどうか。さらには、花火の筒をしっかりと固定出来ているか、火の粉への影響はきちんと考えられているか、緊急時の対策は万全か?このような安全対策を施したうえで、初めて観客に感動してもらえる花火プログラムをつくることが出来るのです」(小勝さん)

花火の『劇場化』をいつか実現させたい

多くの作業行程を経て、いよいよ花火打ち上げ当日を迎える。

「当日の現場では、それぞれの花火用筒に花火を装填、モジュールにつなげます。
別のチームはケーブルをつなぎあわせたり、花火の筒が固定されているかどうかの再確認をしたりして、本番の約3時間前に全ての準備作業が完了するように作業を進めます。

全ての確認作業が終了すると、各スタッフ(オペレーター、オペレーター補佐、無線連絡係、初期消火班、初期警備班)は、それぞれのポジションにスタンバイ。

いよいよ大会本番が始まると、音楽が会場に流れますよね。すると、タイムコードと同期したコンピュータ信号が各モジュールに送られ、それが電気信号に変わって花火に点火するという仕組みです。照明も同じ要領ですね。現在では、人力で玉に着火することはほとんどありません。マザーボードを操作する人間1~2人で操作しています」(小勝さん)

とはいえ、観客席で私たちが感動の歓声を上げている頃、打ち上げ現場はまさに“戦場”。

「暗いし、熱いし、音もすごい。すべてのオペレートは花火技術者を保護するための点火ブース内で行っていますが、本当に過酷な現場です。花火って真下からみると球体なんですよ。ご存知でしたか?立ち入り禁止区域なので、私たちにしか見られない光景です。見上げることはほとんどないですけれどね」(小勝さん)

最後に、花火のプロに花火の魅力について聞いてみた。

「理屈抜きに人間の心をかき立てて、元気にしてくれるのが一番の魅力。毎日暑いですが、花火を見て、元気を出して、また明日も頑張ろうと思ってくれたら嬉しいですね。

本気で花火プログラムに打ち込み表現にこだわった作品では、お客様の拍手や歓声の大きさが違います。限られた時間の中でメリハリをつけた演出にこだわりながら、もっともっと皆さんを感動させられる花火ショーを貪欲に作っていきたい。さらに、観覧席を有料化し、そこからは真正面で花火と音楽のショーをゆったり見られる『劇場化』もいつか実現させたいと思っています」(小勝さん)

夏真っ盛りの8月。夜空に打上がる美しい花火を見上げながら、その真下で汗を流すプロたちの姿をちょっぴり思い出してほしい。きっと、今までとは違った感動を味わえるかもしれない。

これがコンピュータに入力されたプログラムの出力紙。設置したポジションを示すアドレス、タイムコードなどを表す細かい数字が並ぶ

これがコンピュータに入力されたプログラムの出力紙。設置したポジションを示すアドレス、タイムコードなどを表す細かい数字が並ぶ

セッティングされた打ち上げ筒。すべての筒にアドレスがつけられており、マザーボード「フィールドコントローラー」からの指示で自動的に打ちあがる

セッティングされた打ち上げ筒。すべての筒にアドレスがつけられており、マザーボード「フィールドコントローラー」からの指示で自動的に打ちあがる

花火のデザイン図面。新しい花火演出の要となる絵コンテ

花火のデザイン図面。新しい花火演出の要となる絵コンテ

プロフィール

株式会社丸玉屋

オフィシャルサイト:http://www.marutamaya.jp/

photo_yoshinobu bito
text_ miwako matsuzaki
edit_yu koyanagi