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世界のおりがみ事情が集結する場所 おりがみ作家・研究家 山口真 後編

おりがみはうすのギャラリーで、巨大な恐竜やくすだまなどのおりがみ作品に囲まれ、山口さんが語る。世界中の作家によるコンプレックス作品からシンプルな作品まで、展示物は幅広い。

「これだけのコレクションがある場所は他にないはず。ここにある作品は、おりがみのマジシャンともいわれるエリック・ジョワゼルの人物群だけは150万で買い取ったけど、あとは全部作家が置いていったものだよ。神谷哲史、クリス・パルマー、川畑文昭、ブライアン・チャンなど、著名な作家の作品が一堂に会しているんだ。

おりがみのコンベンションは、毎週のように世界のどこかで開かれていて、私は年5~6回参加している。作家とよく知り合いになるんだけど、彼らは作品を人に見てもらう機会が少ないから、こういう場は貴重なんだね。“置いてくれればいいから”って、寄付してくれるよ。そんな経緯であちこちから集まって、結果的にかなり貴重なコレクションになったわけ。世界のおりがみの今が知りたければ、白山・おりがみはうすに来い!と言いたいね。

おりがみは今やインターナショナル。今年2014年8月には、第6回折り紙の科学・数学・教育国際会議が、東京大学で開かれるよ。日本での開催は2回目で、すでに国内外から170を超える論文が届いているのだから、いかにおりがみが国際的に注目されているかわかると思う。

論文で発表されるのは造形作品ばかりではなくて、エアバッグのたたみ方とか、血管バイパスをおりがみの構造を使って広げる術とかの理論もある。

おりがみって実は、人類にとってとてつもなく有用なものなんだよ。アイデアを繰り出せる優秀な人間が集まって、こういった大会で研究成果を発表しあうんだ」(山口さん)

おりがみ好きの3原則“暗い・挨拶ない・しゃべらない”

日本折紙学会には、前身である折り紙探偵団から1999年の立ち上げを経て、今日まで関わってきた。ミウラ折り考案者の三浦公亮会長(東京大学名誉教授)を始め、有名国公私立大の教授ら、名だたる研究者が名を連ねる学会だが……。

「学会に顔を出すと、山口のホスピタリティなしに、ここは成り立たないと言われるよ(笑)。先生たちはまた違うけれど、集まってくる“おりがみ好き”には、その特徴を表す3原則ってのがあってね。
ズバリ、”暗い・挨拶ない・しゃべらない”。
どんぴしゃのばっかり来るんだから。そこをほぐすのが私の役目かなって。

若い彼らは大抵が男子で、ずっと勉強ばかりがんばってきた集中力の高い子たち。東大や早稲田が多くて、なぜか慶応はあんまりいないね(笑)。

彼らはおりがみ以外にもなにかしらマニアックな趣味を持っていて、アニメ・昆虫・プロレス……と探っていけばどれか一つはひっかかる。それがわかれば、今度は“好きな昆虫、おりがみで作ってみろ”とかって薦めるの。ヤンバルテナガコガネとか、誰が知ってるんだよっていうムシを折ってきたりするんだから。

それが入り口になって、次は展開図作ってみよう、もっと細かいの作ってみようとなる。果てには、展開図の折りすじだけを見つめて、感嘆のため息もらすまでになっちゃう子もいるよ。マニアック加減を、遺憾なく発揮してくれるようになるんだな。

集中力という宝石を持っている人間を、コミュニケーションに不備があるくらいで掘り出せないなんてもったいないと私は思う。好きな方向を追求できる道筋を示してやるのも、私のすべきことかなと。ただし、口は悪いけどね」(山口さん)

おりがみの魅力を一言で表すと?

「“いつでも どこでも だれでも、一枚の紙があれば楽しめる”、これがおりがみの魅力。アメリカ最大のおりがみ団体・OrigamiUSAの歴代会長のひとり、マイケル・シャルの言葉だよ。私はOrigamiUSAの会員でもあるんだけど、いつも念頭に置いているんだ。

作家としての活動も学会も、これだけ広がりを見せたのは、おりがみの持つこのシンプルさなくしてはありえなかったこと。学会の運営は正直、今も手弁当なんだ。だけど損得考えずにやってきたから、いい人に巡り会えて今の形まで来たんだと思ってる。あとは、日本折紙学会の会員が増えて、会費が集まることを祈るばかり……!

今はほとんど食えてない作家たちが、作家活動をまじめにすればちゃんと生活できるようになるといい」(山口さん)

頑固のすきまから、茶目っ気たっぷりの人柄が顔を出す。この人を見ていると、おりがみへのイメージが一枚ずつはがされていくから不思議だ。ひらりひらりと、心地よく。

ギャラリーの天井には巨大な恐竜の姿も!

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山口さんの技術と人柄にほれた世界中の作家たちが、自分の作品を贈呈

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日本折紙学会の会報誌。山口さんは40年間に渡っておりがみ関連のことだけで生計を立ててきたプロ中のプロなのだ

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プロフィール

山口真 やまぐちまこと

おりがみはうす代表、折り紙作家。おりがみに関する書籍などを多数執筆、編集する一方、日本折紙学会の運営に長年携わる。昭和19年、東京生まれの東京育ち。ちょっと気は短いが面倒見が良く、人情に弱い江戸っ子で、国内外のおりがみファンからの人望が厚い。

おりがみはうす http://www.origamihouse.jp/
日本折紙学会 http://origami.gr.jp/

photo_yuji imai
text_ chiharu terashima
edit_miwako matsuzaki