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「女性は一度、少女漫画から離れてしまう」少女漫画回帰のすすめ 少女漫画研究家 小田真琴 前編

少女たちが「少女漫画」に憧れたのと同じように、いや、それ以上に「少女漫画」に夢中になった少年がいた。少年は大人になった今も少女漫画を読み続け、ついに「少女漫画研究家」という仕事にしてしまった。

少女漫画研究家・小田真琴さんの自宅には、自身も「何冊あるか、もう数えきれないですね(笑)」と話すほどたくさんの少女漫画がある。約6畳の部屋にぎっしりと並ぶ本棚の数は14。その光景はまるで図書館のようだ。さらに、ダイニングテーブルにも、新刊の単行本がうずたかく積まれている。

そんな小田さんに、改めて「少女漫画」とは何なのか分析してもらった。

「少女漫画は主に、キャラクター同士の“関係性”を描いています。普通の女の子が、大好きな男の子や友人たちといかに関わり合っていくかを見守れるので、感情移入しやすい点が女性の心に響くポイントだと思います。ここが圧倒的な才能や力を持ったヒーローが主人公である少年漫画と大きく異なる点ですよね」

ですが、子どものころは少女漫画に夢中になっていても、大人になるにつれ離れて少女漫画と縁遠くなってしまう女性もいます。

子どものころは友達同士の共通のコミュニケーションツールとして漫画を読んだり、登場人物に恋をしたりして楽しんでいれる。だけど、だんだんファッションやアイドルを好きになったりして、少女漫画だけにお金を使えなくなってくるんです。これは知り合いが言っていてなるほどと納得した言葉なのですが、『女の子は大人になると現実の男に忙しくなるから』と(笑)。

多くの女性は一度、少女漫画から離れる時期が来てしまうのです。男子高校生のころから少女漫画にハマってきた僕からすれば、それはとてももったいないことだと思います」

大人の想像力があれば、より贅沢に少女漫画を味わえる

少女漫画は決して少女だけのものではない、と主張する小田さん。大人が少女漫画を読むべき理由はこんなところにあるという。

「大人になってからでも“学園恋愛もの”を読めば、甘酸っぱい気持ちを思い出せますし、働く女性が“仕事に奔走している女性が主人公の漫画”を読めば、カタルシスを感じたり、人生のヒントを得たりできます。何歳になっても少女漫画を読めば、その主人公の気持ちを感じることができるのです。

僕のおすすめの読み方は、買ってきたらまずは一気にストーリーを追う。これは意識せずとも、好きな作品なら一気に読んでしまいますけどね(笑)。そしてその直後にもう一度読み返し、この2回目でゆっくりと絵や文字を味わう。これは漫画だからできる楽しみかもしれません。映画や小説では時間がかかるので難しいですからね。

僕がいいなあと思う少女漫画は、想像の余地を残してくれるような描写があるんですよね。昔から好きな漫画家さんは、くらもちふさこ先生。くらもち先生は絵が上手なのはもちろんですが、キャラクター同士の関係性を絡ませたり、これはどういう意味なんだろうと読者に考えさせたり、コマに描かれていないストーリーや関係性を想像させるのがとても上手い。読んだ後も余韻に浸れるというのは、贅沢な娯楽ですよね。

自分の中でストーリーを反芻するのも良いですし、友達と解釈を話し合っても楽しいと思います。どんな風にも楽しめるという自由さも、少女漫画の魅力なのではないでしょうか。僕はこの仕事を通して、少女漫画を生活に取り入れてみるともう少し楽しい世界が広がっているよ、と皆さんに知っていただきたいのです」(小田さん)

少女漫画の醍醐味は、読後にあり。この解説を聞いていると、想像力が豊かになった今だから読み返したい作品もいくつか思い当たるのでは。平日の贅沢として、少女漫画にもう一度手を伸ばてはいかがだろうか。

毎月、購入する作品をGoogleドキュメントに入力し、iPhoneからいつでもアクセスできる状態に。これが買い忘れを防ぐテクニックだという

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「学生時代、『別マ』や『ぶ~け』が好きでよく読んでいました。今は漫画雑誌の部数が減ってきてしまって悲しいです」と小田さん

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少女漫画にハマったきっかけは、「高校時代の好きな女の子が『ガラスの仮面』を読んでいて、共通の話題が欲しくて読み始めたら僕までハマちゃっいました(笑)」

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プロフィール

小田真琴

1977年生まれ。女子マンガ研究家。「SPUR」にて「マンガの中の私たち」、「婦人画報」にて「小田真琴の現代コミック考」連載中。Web「サイゾーウーマン」にて「女子まんが学入門」を不定期連載中。
http://d.hatena.ne.jp/odaodanew1/

photo_tomoko tahara
text_ yui tanaka(pless labo)