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ブライダルブーケを押し花に思い出を日常に取り入れる魅力 押し花作家 杉野宣雄 前編

花の楽しみ方は実にさまざま。生花はしばらくすると枯れてしまうが、花を乾燥させる「押し花」はもっと長く花を愛でることができる。

日本を代表する押し花作家・杉野宣雄さんは、1988年に日本で初めて「ブライダルブーケを押し花にして残す」という事業を始め、その画期的な試みに注文が殺到したという。

「押し花の仕事をしていた父の手伝いで、21歳のころから押し花アートに触れました。花を乾燥・保存させる技術もどんどん進化していて、僕は『こんなにきれいに押し花にできるんだ』と感動したのを覚えています。

それから現在まで26年間、押し花だけにこだわってやってきました。それでもまだ、新しい表現やアイディアが出てくるので押し花は奥が深いですよ。それにとくに最近思うのが、押し花は人生を贅沢なものにしてくれるということです。

デジカメが普及して写真を撮るのがとても便利な時代になりました。僕も、最近カメラに凝ったりしているのですが。でも、逆に写真をプリントすることは少なくなっていると感じます。思い出が廃れてしまうのは、さみしいことだと思いませんか?

例えば旅行の写真に、現地で採集した花を押し花にしてあしらえば、家に飾りたくなるインテリアになります。採集したときの思い出も込められますし、押し花で写真に付加価値がつけられると思うんです。こうやって思い出を形に残す作業は、とても贅沢なことですよね」

「押し花を使えば、家に飾りたくなるアートができるんです」

ブライダルブーケの押し花を手にしたお客さまから、「ブーケの押し花を部屋に飾っていると、夫婦喧嘩をしたときもふと目に入り、感情を落ち着けられる」という声も聞くとか。日常的に触れられる距離に思い出を残す意味は大きい。

「ブライダルブーケの押し花には、もうひとついいところがあって、ブーケはひとつしかないけれど、押し花にすると額縁に入りきれなかった花びらがいくつか余ります。それを小さなカードにして、複数の人におすそ分けができます。これもとても喜ばれます。

やはり、ブーケは思いがこもった花なので、より贈り物として意味が生まれるんですよね。最近では、ブライダルの両親への花束も、押し花にして残したいという要望も増えています。

そして、せっかく押し花にして残すなら何か花言葉にちなんだ花束にしよう、と考える方もいます。イギリスでは花を贈る際に、きれいだからという理由だけでなく、メッセージを込める文化が根付いています。そして、それを押し花にして残すということも特別なことではなく行われています。

手紙でのメッセージはなかなか飾っておけないですが、押し花にしてインテリアにすれば常に思いを感じられます。写真やメッセージに囲まれた、思い出いっぱいのお部屋ですごすなんて贅沢じゃないですか」

たしかに、鮮やかで驚くほど花の色がきれいに出ている。花が新鮮なうちに乾燥させるのがコツだと言う

たしかに、鮮やかで驚くほど花の色がきれいに出ている。花が新鮮なうちに乾燥させるのがコツだと言う

押し花をデザインした小物たち。「平面の押し花は立体的な物と組み合わせることができるので、表現の幅が広いですね」

押し花をデザインした小物たち。「平面の押し花は立体的な物と組み合わせることができるので、表現の幅が広いですね」

ウエディングブーケを押し花に。こんな大人っぽいデザインなら、モダンなインテリアにも合いそう

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プロフィール

杉野 宣雄(すぎの のぶお)

1966年、福岡県大牟田市生まれ。日本大学卒業。日本を代表する押し花作家であり、ボタニックアート(押し花、ネイチ ャープリント、レカンフラワー、アルケミックアート、ネイチャーコラージ ュ、押し花クチュールなど植物を生かした芸術の総称)を提唱し、研 究・創作・普及など幅広く活動している。現在、ふしぎな花倶楽部会長、世界押花芸術協会会長、レカンフラワー協会会長、英国押花クラフトギルド名誉会員など。
http://www.sugino-nobuo.com/index.shtml

photo_shinsuke yasui
text_ yui tanaka