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「人生を贅沢にする趣味」押し花は自然の造形美に気付かせてくれる 押し花作家 杉野宣雄 後編

日本における押し花作家の第一人者・杉野宣雄さんは、押し花の普及も精力的に行っている。

「他のアートと比べて押し花のよさは、誰でもできること。絵心がなくても、花そのもののすばらしいデザインを借りることができるのです。文章を書くのが苦手だったら、ハガキに押し花を貼って送ればそれだけで季節の便りになります。

また、生徒さんの中は『失敗した』と言う人もいますが、アートに失敗なんてないんですよ。完成までの過程に過ぎません。きれいな花びらを使わなくても、枯れていく姿も自然のリアルな形です。虫食いの葉っぱも、個性的で愛おしく感じられませんか?

以前、押し花アートのコンテスト作品を作っているとき、作品性を追求するあまり、押し花をコラージュして別のものに作り変えることがあったのです。それは押し花でなくてもいいものになってしまっていた。そのとき自分が表現したいものを考え直したとき、自然の美しさを伝えるべきだと思ったのです」

「押し花を通して、改めて自然の美しさを感じてほしい」

杉野さんに、押し花の魅力を改めて聞いてみた。

「押し花を通して、自然の大切さを感じてもらえるところですね。押し花にする際に花を手にとって見ると『ああ、花びらはこんな風に重なっているんだな。裏はこうなっていたのか』などと、自然の造形美に改めて感動を覚えます。この発見が、自然を大切にしたいという思いにつながるのではないでしょうか。

僕自身もそうなのですが、押し花をはじめると旅や散歩が大好きになるんですよ。しかも、出会う花々はその時々によって違っていて、その花に惹かれるかは自分の気持ち次第。僕はこれを『花とのお見合い』と呼んでいます。

自分の中に表現したいテーマを持っていると、道端の小さな花や、裏返しに落ちている葉など、普段は気付かないような自然の美しさと出会うことができます。そうした旅の思い出とともに花を持ち帰って、ステキな押し花の作品ができたら人に贈りたくなる。この交流ができるところも魅力です。

いくらお金があっても、あたたかい仲間との交流がなければむなしいだけです。押し花は、深くて本当におもしろい。人生を贅沢にしてくれますよ」

押し花を通じて、自然への理解が深まり、人との交流も生まれる。趣味の域を出て、ライフワークになりえるのが押し花なのかもしれない。

旅行先のプリンスエドワード島で採集したもみじの押し花。こだわりは着色は一切しないこと。「自然のリアルさが一番インパクトがあります」

旅行先のプリンスエドワード島で採集したもみじの押し花。こだわりは着色は一切しないこと。「自然のリアルさが一番インパクトがあります」

「押し花にすると、花の構造がよく分かるんです。自然の造形美にほれぼれします」

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押し花は組み合わせの技術。「私にはアートなんてできない」という心配は不要だ

押し花は組み合わせの技術。「私にはアートなんてできない」という心配は不要だ

プロフィール

杉野 宣雄(すぎの のぶお)

1966年、福岡県大牟田市生まれ。日本大学卒業。日本を代表する押し花作家であり、ボタニックアート(押し花、ネイチ ャープリント、レカンフラワー、アルケミックアート、ネイチャーコラージ ュ、押し花クチュールなど植物を生かした芸術の総称)を提唱し、研 究・創作・普及など幅広く活動している。現在、ふしぎな花倶楽部会長、世界押花芸術協会会長、レカンフラワー協会会長、英国押花クラフトギルド名誉会員など。
http://www.sugino-nobuo.com/index.shtml

photo_shinsuke yasui
text_ yui tanaka