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「普通でいい、じゃ納得できない」 見慣れた「傘」に隠された発想のヒント プロダクトデザイナー 梶本博司 後編

逆さに開く傘「UnBRELLA」をデザインし、傘の既成概念をくつがえしたプロダクトデザイナーの梶本博司さん。UnBRELLAは、通常は傘の内側にある骨組みが外側へむき出しになるという斬新なビジュアルをしている。それを閉じれば、濡れた面が内側になるため、持ち運ぶ際に体が濡れずにすむ。見慣れた傘に、こんなアイデアが発見されるとは驚きだ。

UnBRELLA同様、梶本さんの作品は、身近なものにアイデアを加える。たとえば、ケーキ作りの道具をひとつにまとめて収納でき、なおかつ見た目もチャーミングな「BOYA(ボーヤ)」。"つまらない会議に花を咲かせる"というコンセプトの、フタを回転させて開くペンケース。見慣れてしまった既成のハート型に変わる、新しいハート型のデザインを考える試み「ニューハートプロジェクト」など。

このような発想は、どんな瞬間に生まれるのだろうか

「アイデアが出るのは、課題を与えられて、1個のことをひたすら考えているときですね。集中力と、これを思いつきたいという強い気持ちが必要。もちろん“楽しい気分”がないとダメですけどね。でも、僕の場合は仕事のアイデア出しの体制に入ると、自然と楽しい気分になれてるかもな。

普通でいいじゃない、というのもよく分かるんですが、個人的には納得できない。もっといろいろなものを変えたくて、いつも小さな革命を願っています。

今、すごく経済も技術も発展していて、現代社会はすでに完成していると感じるかもしれないけど、絶対にそうじゃない。ほとんどがまだ未完成。この発想をやめたら、世界は終わってしまうと思うんです。僕は常にそういう目で世の中を見ています」

平日の贅沢は「妄想」? 「目の前のことについて妄想してみて」

現状に満足せず、アイデアを生み出し続ける梶本さんに、平日をちょっと贅沢に過ごすアイデアを教えてもらった。

「目の前の小さなことを変えてみようと考えること、でしょうか。こんな風に変えたら素敵なんじゃないかなとか、頭の中で妄想するとかね。普通だと思っていたものも新鮮に見えて来るんです。体を動かしながらだと右脳も働くから、歩きながらやってみるといいと思います。

小さなことは、大きなことに必ずつながっているから、日常的に考えていることも決してバカにできません。思いっきり、自分の妄想に没頭してみましょう」

梶本さん自身はどういった“妄想”をしているのだろうか。

「僕は宝くじ10枚買うたびに妄想していますね。5000万円くらい当たったら、家を買い換えたいなとか(笑)。YouTubeで鉄道の動画を見ているときも、妄想に没頭しています。いろんな路線を見るんですが、たとえば出発の品川駅から終点の三浦海岸まで見ていると、ちゃんと同じ時間が経っていて、日が暮れている。頭の中はもう、電車の旅をしているんです。自分はどこにも行っていないんですけどね(笑)」

大きなアイデアを生み出そうと思うと尻込みしてしまうが、発想の源は意外と身近なところに落ちているようだ。小さな変化のその先を想像してみる時間も、平日の贅沢な過ごし方なのかもしれない。

逆さに開く傘「UnBRELLA」(9,720円)。購入者はサラリーマンが中心だという

逆さに開く傘「UnBRELLA」(9,720円)。購入者はサラリーマンが中心だという

ステンレスのボウルをヘルメットに見立てている「BOYA」(12,000円)。ケーキ作りのツールをまとめて収納できる

ステンレスのボウルをヘルメットに見立てている「BOYA」(12,000円)。ケーキ作りのツールをまとめて収納できる

ISS(いかそうめんシステム)と名づけられた平面素材にスリットを入れる構造を持つペンケース。商品名は「ケースバイケース」(12,000円)

ISS(いかそうめんシステム)と名づけられた平面素材にスリットを入れる構造を持つペンケース。商品名は「ケースバイケース」(12,000円)

プロフィール

梶本博司 かじもとひろし

1955年、兵庫県宝塚市生まれ、大阪育ち。1991年に「カジモトデザインオフィス」設立。2013年 Good Design Award受賞。プロダクトデザインを中心に、幅広くデザイン活動を行う。
http://hiroshi-kajimoto.com/

photo_tomoko tahara
text_ yui tanaka(pless labo)