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絵本作家 松本えつを 後編

4歳になる息子さんの子育てと、作品づくりの日々を送る絵本作家の松本えつをさん。独立して自分のアトリエを持ち、仕事が忙しくなるなかで出産した後、ある事件が起きた。

出産自体は、病院到着から1時間足らずの安産でした。
それで調子に乗ってしまったんですね。
次の日にはもう、夫に頼んでパソコンを病室まで
持ってきてもらい、仕事をしていました。

そして、無事退院。

ところが、それからさらに1週間後、
突然激しい出血に見舞われ、意識を失ってしまったんです。
病院に運ばれ、朦朧としながらも目を開けると、
医者が夫に「もうだめかもしれない」とささやくのが聞こえました。
その途端、出血性ショックを起こし、このままオペをしたら
低血圧で死んでしまうほどの極限状態だったのに、
「子どもを残して死ねない」と泣けたんです。

生死の境をさまようことになって初めて、
お産や子育てを甘く見ていた自分に気づきました。
自分の親や他の人たちが簡単にやっているように見えたのは、
周りのみんなが支えてくれていたからなんですよね。

けれど、それと同時に出産や子育てを巡る公的制度に
疑問や怒りが湧いてくるようにもなって。

そこで、自分にできることから始めようと、
絵本作家を育てる東京クリエイターアカデミー(TCA)を
設立しようと決めました。

手作り絵本と仲間たち

東京クリエイターアカデミー(TCA)は、絵本作家を育成するスクールです。

自分の経験を通して、出産や子育てには
本当に多くの費用や手助けが必要なのだと思い知りました。
同じように頑張るお母さんたちのために、
何かできないかと考えた時、
絵本づくりのノウハウを生かして、女性の自立や
グループワーキングを支援できたらと思ったんですね。

今は私のクラスの募集はいったん停止していますが、
今年の3月に修了した5期生まで、40名以上の卒業生がいます。
これからは、卒業生一人ひとりと“仲間”として向き合い、密に連携して一緒に仕事ができたら。
“先生”ではなく、働く仲間としてみんなと本づくりがしたい、
そんな設立当初の目標に近づけるように、頑張る毎日です。

そんな私のひそかな楽しみは、家族が寝た後に、
夜な夜な子どもや夫だけに向けた手作りの本をつくること。
売り物ではない本を作るのがすごく楽しくて。

一緒にいる時間が短い分、家族のためだけに愛情を込めた本を贈る。
勝手な免罪符かもしれませんが、子どもが大きくなったときに、
「海には連れて行ってもらえなかったけど、これがあるから許してやるか」
なんて思ってくれたら、母としてはすごく嬉しいですね。

彼の心に響く特別な言葉たちを
たくさん贈りたいと思っています。

松本さんが教えてくれた、家族のためだけに絵本を作るという贅沢な時間。子どもと向き合う機会が多くなる夏休み、あなたも何かを手作りしてみては?きっとスペシャルな思い出になるはず。

出生時の体重と同じ重さのお米を入れた手作りの米袋。思い出の品

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TCAの卒業生&スタッフとパチリ。卒業生は絵本作家として独り立ちして活躍中

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最新作『Girls,Be…』とTCAの卒業生からもらった出版祝の絵手紙。どちらも愛情いっぱい

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プロフィール

松本えつを(まつもとえつを)

1975年生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社勤務などを経て独立。2009年「東京クリエイターアカデミー(TCA)」を設立し、専属講師として後輩の育成に尽力する。『しゃらしゃらDays』『おめでとう、1歳。0→1(ゼロワン)』『Girls,Be…』など、絵本のほかイラストエッセイや書籍など、著書&プロデュース作品多数。

BLOG:ETSUWO.COMhttp://etsuwo.com/

撮影協力

クレヨンハウスhttp://www.crayonhouse.co.jp/home/index.html

住所:〒107-0061東京都港区北青山3-8-15

TEL:03-3406-6308

営業時間:1~3F 11:00~19:00、B1F レストラン「広場」11:00~23:00(ラストオーダー22:00)、B1F 野菜市場 10:00~20:00。年中無休