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作家 山口路子 後編

「オードリー・ヘップバーンという生き方」「美神(ミューズ)の恋」など、アートや芸術家、そして魅力的な女性たちの生き方を紐解いた著作を持つ作家・山口路子さん。なかでも人気が高い作品が、サガン、ココ・シャネル、マリリン・モンロー、そしてオードリー・ヘップバーンについて書いた「生き方シリーズ」だ。

「書くときの大きなテーマは"他人と自分をくっきり区別する"こと。
"自分は自分でしかない"ということを様々な表現で伝えているつもりです。

だから生き方シリーズも自己啓発本だと思われるのですが、私なりの「文学」からは外れていないという自負がありますね。そこにはいつも私自身がいるから。

ただ、題材とする彼女たちと一体になるような感覚があるので執筆はとても大変。彼女たちの人生や感情に引きずられて心酔し、毎回その人の痛みが自分の痛みになるという感覚に打ちひしがれています。

マリリンやサガンは自分と似たタイプの女性だったのですっかり溺れちゃって、原稿が進まない日も結構あったかな(笑)。反対にシャネルの場合は、彼女に近づこうとする私に「あんたうるさいわね。早く書き終えてどこか遠くに行ってちょうだい」と怒られているような気がしていました。

いくら魅力的な人物でも、そこに私自身と共鳴する生々しい"傷"を見つけられない限り、書き始めることはできません。

だから、私が作品を一体誰に向かって書いているかといえば、結局は自分自身。
書いている私の前で、泣いたり、迷ったりしているもう一人の小さな私に向けて書いているんだと思います。そして、その向こうにいる私と似たような傷や痛みを持つ人たちのためにも。」

書くことは生きること

そんな山口さんにお気に入りの冬の過ごし方を聞いてみた。

「私はとにかくおうちにいるのが好き。大好きなものに囲まれて、ぬくぬく読書をするのが最高ですね。普段使いのものこそ妥協せず美しく!が持論なので、古いショールをひざかけにするなんてもってのほか(笑)。ざっくりニットにオーバーニーのソックスをあわせるのが好きですね。外ではめったに着ないピンクや赤のソックスも部屋の中なら許されるかしらなんて思いながら、履いてみたりしています」

さらに、気分が疲れた時やほっこりしたい時には「懐中しるこ」を投入。また香りのいいバスオイルも大好きで、ゆっくり半身浴で緊張をほぐすのだそう。

最後に、次回作の構想について尋ねてみると……

「リラックスタイムを挟んで読んだ本から拾った印象的な文章や言葉たちは、いつも必ずノートに書き写すのですが、それをまとめたエッセイを新しく書こうと思っています。

それから、私は芸術家で苦悩している人が好きなので(笑)、エディット・ピアフやフリーダ・カーロについて書いてみるのも面白そうかなとか。

私にとって書くことは生きること。書いている時は辛いことも多いけれど、書き終えたときの“生かされている”という何にも代えがたい感覚をこれからも味わい続けたいですね」

今年も残りわずかとなった12月。キラキラと華やぐ街並みを横目に、1年を振り返りながらじっくり自分と向き合ってみるのもいいのでは?

印象的な言葉を書き溜めているノート。25歳くらいから続けているそう

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仕事場はアンティークの家具で統一されている。蛍光灯は一本もない

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愛飲のハーブティーたち。「香りはとても大切なもの」だそう

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プロフィール

山口路子(やまぐちみちこ)

作家。1966年東京生まれ。大学卒業後、世界史の教師を経て、92年にアートサロン「時間旅行」を設立。雑誌「FRaU」で恋愛を軸にアートを語るエッセイを3年間連載し、人気を得る。エッセイ「ココ・シャネルという生き方」「美神の恋」(新人物往来社)、小説「軽井沢夫人」(講談社)、「女神(ミューズ)」(マガジンハウス)など多数。新著「オードリー・ヘップバーンという生き方」(新人物往来社)も発売中。私生活では、中学生になる娘の母でもある。

BLOG:山口路子Worldhttp://anais.cocolog-nifty.com/blog/

photo_nobuyuki sasaki
text_miwako matsuzaki
edit_yu koyanagi