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ちょっと贅沢お作法

踊る祭り入門 民俗芸能の楽しみ方、伝授します(1) 伝授、祭りの楽しみ方

「お祭り」というと、どんな楽しみ方があるでしょうか。

盆踊りや神社のお祭りに浴衣を来ていって、屋台のやきそばを食べながら友だちとわいわいと盛り上がる、という楽しみ方もあります。ですが、ここではもっと祭りの深い部分、祭りで演じられる、神楽や踊り、お囃子や風習など「民俗芸能」とよばれる非常にローカルな文化の楽しみ方を伝授していきたいと思います。

民俗芸能とよばれるような踊りやお囃子を演じているのは、その土地に住むおっちゃんやあんちゃんたちです。
「要は素人の演芸会じゃないか」と侮ってはいけません。

もちろん、プロダンサーやオーケストラのような舞台の上で演じられる洗練された芸術とは違います。ですが、地域のなんでもないおっちゃんたちが、子どもの頃からどっぷり浸かってきたローカルな“オハヤシ"グルーヴの中で繰り出す、バシッと決まった身振りをよくよく見てみると、胸がときめかずにはいられないはず。

一度そのグルーヴにノリ出すと、おっちゃんは変幻自在。
祭りの舞台を飛び出して親戚に絡んだかと思うと、その親戚のおっちゃんもいっしょに踊りだしたり、おばちゃんの声援に応えたり、踊りの手振りのようにお酒を飲んだりと、祭りの空間まるごとを巻き込んだコンテンポラリーダンスを、フリージャズを繰り広げてしまうのです。

こんな芸達者なおっちゃんが全国各地にいったい何千、何万人いることか、各地の祭りを訪ねていていつも唸らされています。

しかし、祭りは芸達者たちだけのものではありません。
ちょっと不器用な、ちょっと運動神経がない人でも、何十年もその踊りを踊っていれば、その人の持つ体のリズムが独特な「味」になって現れていきます。若者たちは、今は体がよく動き器用ですが、これから年を重ねるごとにどんな味がついていくのか楽しみです。

そうやって地域に住む普通の人、しかし多様な人びとが織りなす踊りは、ちょっと壮観です。全員ピタッと動きの揃った踊りではないのですが、まったくのバラバラというわけでもありません。その地域で共有されている美意識のようなもののもとで、ひとりひとりが今の自分の踊りを踊っているのです。そこで踊る人たちの生き様が、祭りの中で幾重にも折り重なりながら、いま目の前にそれが演じられているということに感動を覚えずにはいられません。

もちろんこれは踊りだけではありません。太鼓や篠笛といった地域のお囃子にしても、灯籠や祭壇といった祭りの小道具作りにしても、とてもローカルで多様な趣向であふれています。芸能として守っていくべき伝統的な演じ方=“カタ"があったとしても、その“カタ"を受け継ぎながら、現在に生きるその土地の人びとが“カタ"の中で自分の芸能のスタイルを見つけていき、時に“カタ"を外れるパフォーマンスを繰り出します。こんなことがもう何百年もその地域で続いているという事実には、もう驚くばかりです。

通信教育やカルチャースクールで習うわけではなく、その地域に住む人びとが親父から息子へと、母から娘へと伝えてきた、そんな祭りが今でも日本だけで毎年何万と行われているのです。

こんな楽しい文化が実は身近で行われているのですから、行かない手はありません。

さあ、祭りに繰り出しましょう。

text_ Kazuhiro Nishijima