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ちょっと贅沢お作法

太鼓という楽器の話~太鼓の耳に念仏 太鼓の耳は何の耳 誰かに話したくなる太鼓の豆知識

打楽器ながら、太鼓には様々な音色があります。
それを決めているのが太鼓の「耳」。
皮の張り方で音色はずいぶんと変化していくのです。

■太鼓の数え方

突然ですが、太鼓はなんと数えるでしょうか。
地域によって違うそうですが、皮が張ってあるものという意味で、「張(はり)」とか「張(ちょう)」と数えるのが一般的です。とはいえ、民俗芸能の世界は広いので「個」「台」「基」「丁」など、その呼び名はいろいろあります。その土地でどうやって数えるのかということだけ調べてみても、太鼓文化の奥深さに触れることができるでしょう。


■太鼓の音は「ドンドコドン」?

「テーン、スッテン、テンツク」
「チャンチャンチャラボコ」
「ダダスコダン」

これは何を表したものかわかりますか。
実は、全部太鼓の音です。

太鼓の音は、擬音で表す場合、「ドンドン」とか「ドコドコ」と表現されるのが多いです。この音は多くの人がよく聴く、盆踊りの太鼓、大売出しで聴く太鼓の音からの印象が強いからかもしれません。

しかし、先ほど紹介したとおり、ほかにも太鼓の音を表現する言葉が地方にはたくさんあります。鼓(つづみ)はその音が「ポンポン」とあらわされる通り、太鼓の一種ですが、盆踊りの太鼓の音とは大きく違います。同じように、太鼓の音を聴き慣わすのは、その地域の方言も影響してきますが、確かに現地でその民俗芸能の太鼓の音色を聴くと「本当だ、さっき地元の人が言っていた太鼓の擬音に聴こえる!」と、感動を覚えることもしばしばあります。太鼓の音色は地域や民俗芸能の種類によって左右されるものです。

 強くたたくだけが日本の太鼓ではありません。不思議と斜めにかする感じに桴(ばち)を当て、「スコン」と軽く太鼓をたたく民俗芸能もあります。一般的には低い音で余韻が長い「ドーン」という音が想像しやすいのですが、わざと余韻を残らないようにした太鼓、「カンカラ」と甲高い音が出るようにした太鼓、さまざまな音色が民俗芸能の太鼓にあるのです。

■太鼓の縁は打たないで

 神楽の笛太鼓を習ったときのことです。「絶対に太鼓の縁(ふち)は叩かんでくれ」と、言われたことがあります。この言葉に最初は驚きました。皆さんも、アーケードゲームの「太鼓の達人」をやることがあったり、盆踊りのやぐら太鼓を見たことがあると思います。だいたい、太鼓の縁(ふち)も「ドンドンカッカッ」という具合に打っていますよね。

 そのイメージが強かったので、「縁は打たないで」という言葉を意外に思いました。打ってはいけない理由を聞くと「縁を叩くとだんだん縁がへこんできて、皮の張りが悪くなる。それを直すにはへこんだ分、胴体の縁を削って皮を張らないといけない」とのことでした。皮を張りなおすだけでも、太鼓の場合は結構なお値段になりますから、切実な問題です。

 もちろん、太鼓の縁を打つ民俗芸能もたくさんありますので、この神楽が特殊だっただけかもしれませんが、万が一、どこかで太鼓を触れさせてもらうときには、一度「縁打っても問題ないですか」と伺ったほうが間違いはありません。その土地によってやり方も変わってきますので、地元の人たちの楽器の扱い方も聞いておくことをお勧めします。


■太鼓にも耳がある?

 太鼓にも耳があります。とはいっても、鋲留(びょうどめ)太鼓に限定した話です。太鼓の皮の縁に、なんだか妙な「ぽよぽよ」とでっぱったものがたくさんついてるものを見かけたことはないでしょうか。これが「耳」です。「縁(えん)」ともいうそうです。これは、皮を引っ張るときに工具にひっかける部分。完成したときに切り落としてしまうことも多いのですが、強く締める太鼓の場合、使い古してゆるんだ時に締め直しがしやすいように残しておくことがあります。

 現在は創作和太鼓の人気もあり、太鼓屋さんが無意識に太鼓の張りを強めてしまう傾向があるそうです。その分、太鼓の音も高音になるわけですが、そういう音を好まない民俗芸能もあるため、各地の保存会は、張り替えに気を使う地域もあります。

 とある地域では「耳付きにしてもらったけど、これだけ高い音ならしばらく耳も使わないよね。もっと打ち込んで皮が伸びないといい音にならないからなあ」と話しているのを聞いたこともあります。それほど、太鼓店さんの無意識の「張り方」が芸能に影響している場合もあります。そのため太鼓店の中には、鋲留めの工程で音を決める際に、実際に注文主を立ち会わせて、音を確認してもらいながら行うところもあるそうです。それぐらい、太鼓の音色は大事であり、こだわりの深いものなのです。

Photo Kazuhiro Nishijima
Text Yu Niimi
Edit MATSURIsta