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ちょっと贅沢お作法

神楽絵で描く里神楽の世界~相模里神楽編 神楽絵『三番叟』

神に捧げる舞いや踊りを意味する「神楽」。その中でも、笛、大拍子、長胴太鼓のお囃子に乗せて、仮面をつけた踊り手が舞う形式のものは「江戸の里神楽」と呼ばれています。『神楽絵師』としてそんな里神楽の様子を描く著者が、その魅力をお伝えします。

私が神楽に出会ったのは、去年の6月のことです。大学に入って2年半、制作に行き詰まりを感じ、自分の興味と画風にぴったりな題材はないかと模索していた頃。伝統的なものや日本的なものが好きで、民族衣装について調べたり昔話を読んだり、お祭りに行って写真を撮る事が私の楽しみでした。

 ある日東京の神社のお祭りで「江戸の里神楽」というものが観られると知り、行ってみたところ、一目でその魅力に引き込まれてしまったのです。

 装束とそれに用いられる文様、面(おもて)、神社の建築や凛とした空気、お祭りの活気。神社で行われる儀式であり、伝統的な芸能であり、しかしその中に観客を楽しませるような笑える場面もあり、ただの舞ではなく日本神話を元にした劇であるという点にも大きな魅力を感じました。

江戸の里神楽には、私の好きなものが全て詰まっていたのです。
以来、他の地方の神楽やまつり、神社、古事記等にも興味を持ち、『神楽絵師』として制作をするようになりました。

今回描いた絵は、「相模里神楽」の様子です。

 相模里神楽を行う垣澤社中は、明治45年(1912)年から続く里神楽衆で、現在も神奈川県厚木市周辺の神社の祭礼で里神楽を奉納しています。

 垣澤社中の地元である相模の愛甲(あいこう)郡には、江戸時代中期に江戸から里神楽が伝わり、愛甲神楽として発展しました。当時は3軒もの家元社中が存在し、盛んに里神楽が行われましたが、明治維新後は衰退の一途をたどり、現在では垣澤社中のみが神楽を継承しています。現家元は3代目垣澤勉氏であり、昭和46年に厚木市の無形民俗文化財に指定されています。

 また垣澤社中は全国的にも珍しい「面芝居」も行っています。面芝居とは、歌舞伎などの演目を面を着けて演じる芝居であり、歌舞伎と神楽が混ざった様なもの。戦前まではどこの里神楽の社中も盛んに行っていたそうですが、今は全国的にも数少なくなっています。(栗田知佳)

――解題『三番叟』(西嶋 一泰)
 三番叟は非常に儀式的な霊力を持つ舞です。古くは猿楽で演じられていたといい、現在でも能、文楽、歌舞妓、そして神楽など各地の民俗芸能でも盛んに演じられます。
 「三番叟」という名は、必ず三番目に演じられる演目だったことから来ています。三番叟を舞い、舞台を清めてから、その日の芸能が始まるのです。今でも、国立劇場に文楽を観に行くと、どんな演目も観に行ったとしても、必ず上演前に「幕開け三番叟」が舞われています。
 また三番叟は祝福の舞でもあります。派手な衣装に、軽快なお囃子にのせて、舞う三番叟は、舞台と観客を祝福し、これからはじまる芸能を前にして、わくわく感を盛り上げてくれます。
 垣澤社中の三番叟は、喜びを体で表現するような躍動感あふれる非常におめでたい舞となっています。

Illust Chika Kurita
Text Chika Kurita Kazuhiro Nishijima
Edit MATSURIsta