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潜入!奄美の豊年行事クガツクンチ~名音編

奄美群島で毎年行われている豊年を祝う豊年祭「クガツクンチ」。五穀豊穣や集落の無事を祈って、奉納相撲が行われます。この祭りを現地で実際に見学してきた著者が、その様子をお伝えします。

 有人8島、12市町村から成る奄美群島。
琉球(沖縄)と大和(鹿児島県本土)の文化が入り交じる地域と言われ、
島や集落によって言葉や風習が大きく異なります。
大雑把に分けるなら奄美大島(加計呂麻島、請、与路島を含む)、
喜界島、徳之島は大和の影響が濃く、
南の沖永良部島、与論島は琉球の影響が強いとされます。
今回は有人8島の中でも最大の奄美大島の伝統行事を紹介したいと思います。
 
正月や一部地域での盆などを除けば、奄美の行事は今もほとんどが旧暦で行われており、
豊年行事は、旧暦8月15日の「十五夜」と、
旧暦9月9日の「クガツクンチ」が中心となります。

■年に2度の豊年祭―大和村名音集落

 奄美大島中部に位置する大和村の名音(なおん)集落(100世帯、200人)。
ここは奄美でも珍しく(おそらくは唯一)、年に2度、豊年祭を行なっています。
大和村内の多くの集落では現在、十五夜とクガツクンチの当日ではなく、
直近の日曜日に豊年祭を行なっています。
名音集落でも人が集まる日曜日に敬老会と合わせて豊年祭を開いていますが、
クガツクンチ当日には改めてもう一度、ノロによる伝統に則った豊年祭を開きます。
筆者が見学させていただいたのは、10月21日の「1回目の豊年祭」です。

 午後1時半、集落の高台にある「名音お寺(通称・テラ)」にまわし姿の男たちが集合。
テラを管理するクジヌシの福山東剛さん(61)が祈りを捧げ、五穀豊穣や集落と
力士の安全を祈願します。
特に今回は2012年9月の末に奄美群島を襲った台風17号の影響で、
名音集落でも家屋損壊や床上浸水の被害があったことから、
福山さんが「厄祓いの意味も込めて、盛大に相撲をうってほしい」と声がけ。
力餅と酒が力士らに振舞われました。

 福山さんに聞くと、「名音お寺」は昔からあるもので、
戦後に神社と寺が合祀されたといいます。
テラと呼ばれるものの仏教的な寺としての機能はなく、
昔からノロ(宗教的儀式をつかさどる女性)が祭祀を行う場所だったのでしょう。
集落では改修を行なっているそうで、詳しい起源や正式な名称は福山さんも知りませんでした。

 祈願を終えると勝三千也区長(53)を先頭に、福山さん力士らが続いて豊年祭の中心と成る名音生活館までカミミチ(神道)を練り歩きます。これは「フッダシ(振り出し)」と呼ばれ、勝区長が塩で道を清め、20人の力士らは「チヂン」(手持ちの太鼓)とほら貝を鳴らし、「イヤー、ヨイヤ、ヨイヤ」の掛け声をあげながら歩きます。

 奄美に来てまず目についたのは、どこにでも土俵があること。人が集まる公民館や生活館、集会場のほとんどに土俵が作られています。中学の授業にも必修として相撲があるとも聞きました。

 この日は敬老者や集落民だけでなく、バスを借りきって出身者も駆けつけました。生活館で行われるのは豊年奉納相撲大会。小中学生の取り組みに始まり、青年団と壮年団の対決が披露されます。中には兄弟対決、親子対決もあり、中学生を相手にする父親に対しては威勢よくやじが飛びます。また新生児の土俵入りもあり、化粧まわしをつけた愛らしい姿には拍手が。もちろん泣き出す子の姿もあり、その都度笑いが起きます。

 そして女性たちによる「中入り」。ちょうど取材に来ていた地元新聞の記者によると、地域ごとに「中入り」の趣向は異なるとのこと。名音集落では、仮装した女性らが「フッダシ」のように「イヤー、ヨイヤ、ヨイヤ」の掛け声で入場し、土俵の周りをぐるぐる回ります。かなりきわどい下ネタも飛びだしてきて、腹筋を痛めるくらい笑い続けてしまいました。また合間には、集落の3人の保育園児による踊りや、日本舞踊も披露されました。

 一方、クガツクンチ当日の豊年祭には、鹿児島市からノロが来て、前年に立てた願を解き、新たに1年の安全や豊穣を願う「願直し・願立て(ガンノーシ・ガンタテ)」が行われます。

 豊年祭において現在もノロによる祭祀が行われるのは、大和村内では名音集落が唯一でしょう。大和村が2011年に発行した「広報やまと11月号(特集・絆を深める伝統行事)」には、ノロによる祭祀をはじめ、村内の豊年祭行事が紹介されています。
「広報やまと」はネットでも見ることができます。

Photo Tstukasa Ogata
Text Tsukasa Ogata
Edit MATSURIsta!