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ちょっと贅沢お作法

楽器としての太鼓~打って太鼓の緒を締めよ

自分たちで太鼓を締めて音が調整できる締め太鼓。
古くから、世界的に使われている太鼓ですが、
日本のお祭りでは、どんな締め太鼓が使われているのでしょうか。

■「締め太鼓」とは?

 「締め太鼓」は皮を張る際に、皮の縁に紐を通し、それを締め上げて皮を張るタイプの太鼓のことをいいます。このタイプの太鼓はずいぶんと古く、なんと古墳時代の埴輪(はにわ)にも、締め太鼓を叩く人物が見られるほど。写真資料で見る限り、ビア樽のように真ん中が膨らんだ胴体の太鼓のようを左手に持った桴(ばち)で叩いているようにも見えます。太鼓の胴体には紐締めの表現なのか、上半分にそれらしき三角形を組んだような線彫りの模様もしっかりあります。昔の人がどのような音楽を奏でていたのか思いをめぐらせてみるのも楽しいですね。

 この埴輪の持っている太鼓が、そのまま今の日本の「締め太鼓」につながっているかはさだかではありませんが、太鼓の皮を「紐で締め上げる」発想というのは、ずいぶん古く、また世界各地にもあることから、かなり普遍的なものであることは間違いないようです。

■「締める」のも楽じゃない

 締め太鼓は、紐で皮を張るため、どうしても使っているうちに緩んでくる場合があります。それを締めなおすのは、なかなか手間で面倒な場合があります。特に、高い音を好むお囃子の場合、太鼓の紐をきつく締め上げるという行為は、皮全体にまんべんなく力がかかるように、力いっぱい締め上げなくてはならず、汗だくになるほどの大変な作業です。

 特にきつく締め上げた太鼓は皮が痛むため、使い終わったときには緩めておくのが基本です。となると、毎回演奏の度に、きつい思いをして締め上げ、また緩めるという行為をしていることになります。その作業は決して楽ではありません。

■「いっそのことボルトで……」

大変な苦労が伴う締め太鼓ですが、ここに画期的な発明品があります。
ボルト締めの締め太鼓です。
「紐で毎回締めるのはやっかいだ。いっそのことボルトで締めてしまえ」と誰が考えたかわかりませんが、こういう形態の太鼓は、お囃子で高い太鼓の音を好む地域では、多く使われています。何よりも、締めるのが楽ですし、紐締めよりもきつく締めることができ、より理想の音に近づくことができるということで、重宝がられているのが普及している理由です。

 ボルトの締め方にいくつかタイプもあります。例えば、太鼓は愛知の西三河地方を中心に伝わる「ちゃらぼこ太鼓」で使われる、ボルト締めの締め太鼓です。これは、ボルト締めであるのはもちろん、なんと胴体は真鍮製、ようするに金属の胴なのです。さらに細く切った竹の桴などで叩くため、甲高く金属的な「カンカラ」という感じの音がします。「ちゃらぼこ」の語源は、この太鼓の音が「ちゃんちゃんちゃらぼこ」と聴き慣わされているため、という話もありますが、確かに「どんどん」とは聴こえない、独特な音色です。近くで聴いていると耳が痛くなるほどの高音域の太鼓です。

「ちゃらぼこ太鼓」という芸能自体は、愛知県の碧南や安城、蒲郡、豊田など愛知の中央部(西三河あたり)で盛んにおこなわれています。しかし金属胴の太鼓の分布に関しては芸能自体が「ちゃらぼこ」と名前がついていなくても、このタイプの太鼓を使っている例もあるため、実態は把握できないほどより普及していると思われます。

 ほかにも、千葉県佐原市の「佐原囃子」では、締め太鼓だけでなく、大鼓(おおつづみ)までもボルト締めにしている例もあります。能楽で使う鼓のなかでも大鼓という種類のものをボルト締めにしているのには驚きました。能楽を見慣れている人からは「邪道な使い方だ」と思われるかもしれませんが、民俗芸能での楽器の使われ方は、このように、どんどん使い方が変わったり、改良が重ねられたりする傾向が強い場合もあります。

 もちろん、逆に楽器の古い使い方を残している民俗芸能もあるわけですから、保守的な面もあります。そういう進取と保守の両方がある「幅の広さ」が民俗芸能の魅力でもあります。

Photo Kazuhiro Nishijima
Text Yu Niimi
Edit MATSURIsta!