平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン Daily Premium Calendar

テーマ「海」

歌人の鈴掛真です。『贅沢短歌』では、皆さんの毎日のちょっとしたエッセンスとなるように詠ったオリジナル作品を、創作のコツと共に毎週ご紹介していきます。

9月のテーマは「海」。暑さ厳しい夏が静かに終わりを告げる頃。太古の昔から地球の歴史を見つめてきた母なる海には、まるで人々の幾千もの記憶が溶け込んでいるよう。切ない夏の終わり、そして生命の起源を詠った歌を集めました。
第3週目である今回は皆さんからの公募短歌をご紹介、第4週目には好評のWEBラジオも配信!それでは鈴掛真が、奥深い短歌の世界へ誘います。

  • 砂浜に手紙を書いたけどすぐに波が消すから見ないでください
  • 誰もいない沖で交わした約束をカモメは空で知っていたんだ
  • 僕たちを象るものを海水に溶かし原始で再会しよう
  • 雨つぶを瓶にあつめて掌のうえにちいさな海をつくった
  • 海岸線愛しいひとの手をひいて刻む足跡照らし出す月
  • 波音で隠したかったはずなのに胸の鼓動も震える声も

 先月のWEBラジオでもお話しましたが、短歌は31音しか無いために、描きたい物語のすべてを詠い切れない場合が多々あります。しかしそのおかげで、言葉の続きを読者が想像できたり、聞こえないはずの余韻が聞こえてくるのです。山乃モトキさんの作品ではまさに、胸の鼓動も震える声も「聞こえてしまった」という事実が、詠い切らなかったことで効果的に読者に響いてきます。
 なつきさんは恋する人との海岸線でのワンシーンを、シンプルに、丁寧に詠っています。文体がぶつ切りになってしまっているのが少々残念ですが、夕暮れから夜へと変わる海の情景が単刀直入に伝わってきますね。
 藤崎しづくさんは、今年は海へ行けなかったのかな?実際に海で体験したエピソードではないけれど、雨水の入った小さな瓶のイメージが、物悲しさや海への憧れを伝えています。漢字と平仮名の表記にもこだわりが感じられて、見た目にも美しい一首だと思います。

プロフィール

鈴掛真(すずかけ しん)

鈴掛真(すずかけ しん)

歌人。
Twitterとブログ「さえずり短歌」で作品を随時発表。短歌インスタレーション、朗読LIVEなど、これまでに無い新たな短歌の表現を追求している。セオリーは「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」。著書に『好きと言えたらよかったのに。』(大和出版)がある。また、日本における同性愛への偏見の解消にも取り組んでいる。

http://ameblo.jp/suzukakeshin/