平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン Daily Premium Calendar

テーマ「香」

歌人の鈴掛真です。『贅沢短歌』では、皆さんの毎日のちょっとしたエッセンスとなるように詠ったオリジナル作品を、創作のコツと共に毎週ご紹介していきます。

11月のテーマは「香」。先月は聴覚に訴える歌をラインナップしましたが、今月は嗅覚。五感の中で最も強く脳に記憶されるといわれている感覚ですが、言葉として人に伝達するのはとても難しいものです。本来は文字から香るはずのない匂いが漂い、鼻孔を刺激するような歌を集めました。
第3週目である今回は皆さんからの公募短歌をご紹介、第4週目には好評のWEBラジオも配信!それでは鈴掛真が、奥深い短歌の世界へ誘います。

  • あちこちに匂いが染みてしばらくはシャワー浴びずにぼーっとしてる
  • シトラスの同じソープを使わせた首は果実のように危うい
  • 飲み過ぎたワインの薫るキスだからきっと忘れてしまうのでしょう
  • 手首からばななのにおいがする あたしきっと前世はくだものだった
  • 抱かれる日来ないと知るもツルツルの肌にせんとてローズを纏う
  • たちまちに森の香りに包まれるローズマリーの緑葉摘めば

 おかげさまで大好評の公募短歌! 応募してくださる方が毎月増えているので、選考がかなり難航するようになってきました…。どの作品も素晴らしいのですが、僕が選考基準として掲げているのは「現代語の美しさ」と「表現の仕掛け」です。これは他の短歌コンテストとは一線を画す価値観かもしれません。表現の仕掛けとは、ただ5・7・5・7・7を並べただけではなく、そこに読者を惹き付けるための何か一工夫が盛り込まれているか、ということです。それを踏まえて皆さんの作品を見てみましょう。
 アメリカから投稿してくださった西岡徳江さんの作品は、まるで現代短歌のお手本とも言うべき美しさ。短歌に長年親しまれているようで、熟練の雰囲気が伝わります。
 丸山朱梨さんの作品では、「抱かれる日来ないと知るも」が表現の仕掛けと言えるでしょう。単にお肌をツルツルにした、ということではなく、そこに含んだ女性特有の美への探究心が恐いほどに伝わってきます。
 藤崎しづくさんの歌を読んだ瞬間、思わず吹き出して笑ってしまいました。なぜ手首からバナナの匂いが!? 本当のことなのか疑ってしまいますが、それこそ彼女が歌に盛り込んだ表現の仕掛け。「ばなな」をあえて平仮名にしたことも、摩訶不思議さを際立たせていますね。

プロフィール

鈴掛真(すずかけ しん)

鈴掛真(すずかけ しん)

歌人。
Twitterとブログ「さえずり短歌」で作品を随時発表。短歌インスタレーション、朗読LIVEなど、これまでに無い新たな短歌の表現を追求している。 セオリーは「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」。著書に『好きと言えたらよかったのに。』(大和出版)がある。

http://suzukakeshin.com/