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テーマ「涙」

歌人の鈴掛真です。『贅沢短歌』では、皆さんの毎日のちょっとしたエッセンスとなるように詠ったオリジナル作品を、創作のコツと共に毎週ご紹介していきます。

3月のテーマは「涙」。喜びや悲しみ、感情の激しい昂りによって人の目から零れ落ちる滴。堪えきれず込み上げた様々な想いが形となった、この世で最も美しい液体と言えるのではないでしょうか。そんな皆さんの涙を誘うべく、とびきり切ない"泣き"の12首を集めました。
今週は好評のWEBラジオも配信!それでは鈴掛真が、奥深い短歌の世界へ誘います。

  • もう誰も泣かないように僕たちが主演のコメディ映画を撮ろう
  • あなたとの記憶を消せるスイッチを発明してもたぶん押さない
  • 誰しもがきっと笑っていたはずだ 君が生まれたその日ばかりは
  • 要注意人物 会いたくなるから涙のなかの鍵をぬすんで
藤崎しづくさん  26歳
  • こんなにも悔しかったんだと知った頬を剥がれない涙の火傷
山乃モトキさん 32歳 会社員 千葉県在住 会社員
  • そのままでよいと言うけどそのままの気持ちを言えず涙ひとつぶ
日萌嘉さん 東京都在住

贅沢短歌Webラジオ

 日萌嘉(かもか)さんの作品は、まるで歌詞のようなリズムが心地良いですね。短歌では同じ単語が複数存在すると、もたついてしまうことが多いのですが、同じ「そのまま」でも「そのままで」と「そのままの」ではそれぞれ違うものを指しているので、繰り返し読むことで味が深まる一首です。
 山乃モトキは、涙の通り道を「火傷」と表現し、独自の感性を光らせています。「頬を剥がれない」は8音なので厳密には字余りですが、「頬を」や末尾の「い」は声にすると自然と流れる音なので、響きにもこだわっていることがわかりますね。「剥がれない」という言い回しが、詠われている悔しさを一層際立たせています。
 藤崎しづくさんからも、文学的でユーモア溢れる歌が届きました。まるで警察の貼り紙のような緊張感と、恋の切なさが共存した雰囲気にオリジナリティを感じます。「涙のなかの鍵」という表現がとっても印象的ですね。「盗」という漢字をあえて使わなかったことで女性らしさが生まれていて、見た目にも美しい秀作だと思います。

プロフィール

鈴掛真(すずかけ しん)

鈴掛真(すずかけ しん)

歌人。
Twitterとブログ「さえずり短歌」で作品を随時発表。短歌インスタレーション、朗読LIVEなど、これまでに無い新たな短歌の表現を追求している。 セオリーは「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」。著書に『好きと言えたらよかったのに。』(大和出版刊)がある。

http://suzukakeshin.com/