平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン Daily Premium Calendar

テーマ「花火」

 歌人の鈴掛真です。『贅沢短歌』では、皆さんの毎日のちょっとしたエッセンスとなるように詠ったオリジナル作品を、創作のコツと共に毎週ご紹介していきます。

 8月のテーマは「花火」。夜空を色鮮やかに彩る夏の風物詩。伝統の技が引き継がれた意匠は、どんなに暗い時代でも人々の笑顔を輝かせてきました。けれどその灯火は美しさと共に、瞬間で消えてしまう儚さも併せ持っています。そして短く終わってしまう夏の切なさも織り交ぜた12首をお届けしていきます。
 今週からは皆さんからの公募短歌をご紹介、第4週目には好評のWEBラジオも配信!それでは鈴掛真が、奥深い短歌の世界へ誘います。

  • 早々と夏は終わってしまうのにまだ君のこと何も知らない
  • 群衆がスターマインに見とれてる今が伝えるときだ少年
  • 話したいことはたくさんあったのに「きれいだね」って繰り返すだけ
  • この恋も花火のように終わるのか浴衣の染みはまだそのままに
いなぞうさん 47歳 茨城県在住
  • これだけはあなたと二人でやりたくて袖に隠した線香花火
まにみさん 21歳 学生 広島県在住
  • 昼間見た大輪のひまわりに似た花火が黒のキャンバスに咲く
LongMingさん 35歳 会社員 愛知県在住

 今週は恒例の公募短歌をご紹介!読者の皆さんが描き出す「花火」の短歌とは?
 LongMing(ろんみん)さんは、夜空を彩る花火を「黒のキャンバスに咲く」というロマンチックなフレーズで表現しています。昼と夜の対比が美しく、「大輪のひまわり」という言葉選びも、壮大な花火のイメージと上手く響き合っていますね。
 まにみさんは、学生らしいフレッシュな作品を送ってくれました。「(火を)つけたくて」ではなく「やりたくて」とした、背伸びをしない21歳としての等身大の感覚に好感を持てます。僕も1週目の短歌で用いましたが、今回の公募短歌で最も多く登場したモチーフが線香花火だったのです!か弱く儚い灯火は、夏の恋の象徴なのですね。
 いなぞうさんは、浴衣に残る染みから伝わる夏の終わりの物悲しさを詠っています。ビールかワインか、あるいは屋台のたこ焼きの醤油かソースか……どんな染みなのかは詠われていませんが、それ故に読者は様々な情景を想像することができます。うっかり付けてしまった不本意な染みが、奇しくも恋の残像となってしまった。コミカルとシリアスが共存するユニークな一首ですね。

プロフィール

鈴掛真(すずかけ しん)

鈴掛真(すずかけ しん)

歌人。
Twitterとブログ「さえずり短歌」で作品を随時発表。短歌インスタレーション、朗読LIVEなど、これまでに無い新たな短歌の表現を追求している。 セオリーは「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」。著書に『好きと言えたらよかったのに。』(大和出版刊)がある。

http://suzukakeshin.com/