平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン Daily Premium Calendar

テーマ「花火」

 歌人の鈴掛真です。『贅沢短歌』では、皆さんの毎日のちょっとしたエッセンスとなるように詠ったオリジナル作品を、創作のコツと共に毎週ご紹介していきます。

 8月のテーマは「花火」。夜空を色鮮やかに彩る夏の風物詩。伝統の技が引き継がれた意匠は、どんなに暗い時代でも人々の笑顔を輝かせてきました。けれどその灯火は美しさと共に、瞬間で消えてしまう儚さも併せ持っています。そして短く終わってしまう夏の切なさも織り交ぜた12首をお届けしていきます。
 今週は皆さんからの公募短歌をご紹介、好評のWEBラジオも配信!それでは鈴掛真が、奥深い短歌の世界へ誘います。

  • ひぐらしの最後の雄が死ぬ前に好きと言えたら秋にならない
  • 絵日記にしたのは花火を見たことじゃなくて隣が君だったこと
  • 終わり行く季節に代わり指先で手持ち花火の火薬が香る
  • ありふれたどこにでもある八月を花火と君が明るく照らす
えむさん 23歳 神奈川県在住
  • 人ごみに君を失いたくなくて花火の柄の浴衣引き寄す
あいらむさん 46歳 主婦 徳島県在住
  • 光より音の速さが遅いから聞こえた君の小さな「僕も」
練さん

贅沢短歌Webラジオ

 今週は恒例の公募短歌をご紹介!読者の皆さんが描き出す「花火」の短歌とは?
 練さんは、音が遅れて聞こえて来る花火の特性を、二人の会話と絶妙に絡めながら表現しています。上の句と下の句で別々の情景を詠っていつつも、何とも自然な流れで繋がっているのが見事!「花火」という言葉を用いずとも、寄り添う二人とその会話が目に浮かぶようですね。
 あいらむさんは、たくさんの人でごった返す花火大会の情景を上手く表現しています。主婦の方なので女性の目線であることが想像できますが、男性目線としても読むことができますし、あるいはお子さんに向けた歌かもしれません。「花火の柄」という微妙な手掛かりから、相手がどんな人物なのかを様々に想像することができますね。
 えむさんの作品は、とてもシンプルな言葉で綴られているのに、夏という季節をたったの31音で総括できているところが素晴らしい!何か特別なことをしたわけではないのに、「花火と君」という2つのキーワードが、えむさんにとって何より特別だったことがひしひしと伝わってきます。短歌としても、難しい言葉を用いるばかりが表現では無いことに改めて気づかせてくれるような秀作です。

プロフィール

鈴掛真(すずかけ しん)

鈴掛真(すずかけ しん)

歌人。
Twitterとブログ「さえずり短歌」で作品を随時発表。短歌インスタレーション、朗読LIVEなど、これまでに無い新たな短歌の表現を追求している。 セオリーは「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」。著書に『好きと言えたらよかったのに。』(大和出版刊)がある。

http://suzukakeshin.com/