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テーマ「苔」

 歌人の鈴掛真です。『贅沢短歌』では、皆さんの毎日のちょっとしたエッセンスとなるように詠ったオリジナル作品を、創作のコツと共に毎週ご紹介していきます。

 9月のテーマは「苔」。太古の昔からこの星に存在し、生命の起源としての姿を今に残すコケ。草花とは異なる独自の生態系を築いた神秘的な風情は、庭園や盆栽など、我々日本人の文化と密接な関わりを持ち、国歌『君が代』にも登場しています。今月は『君が代』の現代語訳を含む12首をお届けしていきます。
 今週からは皆さんからの公募短歌をご紹介、第4週目には好評のWEBラジオも配信!それでは鈴掛真が、奥深い短歌の世界へ誘います。

  • 君の住む街の緑を増やすため胞子よ風に吹かれて届け
  • まだ人がいない太古の惑星もこんな緑であったのだろう
  • リビングにふたり並んで腰掛けたモスグリーンのソファーの記憶
  • 僕たちはヒカリがないと生きられぬ あの大木のテッペンに行く
横須賀タミーさん 53歳 学童保育指導員 神奈川県在住
  • エメラルド幾星霜を経て生した大地に宿るいにしえの声
慎之助さん 兵庫県在住
  • 地を這ってコロニー守る苔を見て「むす」のニュアンス実感する吾
しゅう・かつ美さん 21歳 大学生 東京都在住

 今週は恒例の公募短歌をご紹介!読者の皆さんが描き出す「苔」の短歌とは?
 しゅう・かつ美さんは、今月第1週目で取り上げた『君が代』でも詠われている「苔むす(苔生す)」という言葉をモチーフにしています。確かに「むす」という響きには、まさに苔が水分を多く含んだ大地に群生している様子をイメージさせる力がありますよね。「コロニー」と「ニュアンス」2つのカタカナ語が絶妙なバランスで配置されているのも美しいです。
 慎之助さんは「苔」という単語を使わず、大胆に「エメラルド」という色の例えから詠い始めています。「幾星霜」「いにしえ」など、苔を連想させる様々な言葉を丁寧に選りすぐったことが伺えます。色で詠い始めながら末尾を「声」としたことで、苔の生命力を三次元で感じられるような迫力ある作品ですね。
 横須賀タミーさんは、苔の性質を自分自身に置き換えた歌を送ってくれました。「ヒカリ」と「テッペン」をカタカナにしたことでポップな印象に仕上がっています。いつかスポットライトに当たる日を夢見て頂上を目指す、ひたむきに生きる人間像が、読み手の背中をぽんと押してくれるような一首です。

プロフィール

鈴掛真(すずかけ しん)

鈴掛真(すずかけ しん)

歌人。
Twitterとブログ「さえずり短歌」で作品を随時発表。短歌インスタレーション、朗読LIVEなど、これまでに無い新たな短歌の表現を追求している。 セオリーは「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」。著書に『好きと言えたらよかったのに。』(大和出版刊)がある。

http://suzukakeshin.com/