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タイポグラフィ

日本に近代をもたらした
幕末から明治にかけて活躍した大人物のおおくは、
ひとつの分野にとどまらず、多方面において
そのマルチな才知を発揮した豪傑がすくなくありませんでした。

そのひとりが、わが国の「近代活版印刷術の父」ともされる
本木昌造(もとぎ しょうぞう 1824-1875)です。

長崎に生まれた本木昌造は、母方の実家へ養子に入り、
その家業であったオランダ通詞を継ぐことになります。
通詞の仕事は、鎖国時代のわが国において、
西洋のあたらしい文化や技術に接する稀有な機会と運命を
昌造にもたらしました。

昌造の好奇心は、西洋のさまざまな新技術に注がれましたが、
それらを活字で印刷した西洋の書物から学ぶうちに、
近代的な活字製造と印刷技術の重要性に着目するようになり、
わが国への西洋式活版印刷術の導入と発展に尽力しました。

本木昌造の功績は、印刷の分野にとどまらず、
航海術、造船、製鉄、架橋、教育、出版と多岐にわたりました。
そんな多才な昌造の風流人としての側面を知ることができる
昌造直筆の和歌が残されています。

  • 雨中春草
のどかにも 降くらしたる 春雨に みどり色そふ 野べの春草
  • 初 冬 暁
きのうまで あわれしらせし 秋風も 寒けくなりぬ 暁のそら
  • 寄春風恋
谷ふかみ むすぶ氷も 春かぜの ふくには終に とけ行ものを
  • 尋 残紅葉
いざさらば はやしのはたを わけて見ん 秋のなごりの 梢いかにと
  • 塩 竃 浦
おしよする 浪よりかすむ 塩がまの うらの苫屋に 春たちにけり

短歌よみくだし文(現代かな表記)

雨中春草
のどかにも 降くらしたる 春雨に みどり色そふ 野べの春草

初 冬 暁
きのうまで あわれしらせし 秋風も 寒けくなりぬ 暁のそら

寄春風恋
谷ふかみ むすぶ氷も 春かぜの ふくには終に とけ行ものを

尋 残紅葉
いざさらば はやしのはたを わけて見ん 秋のなごりの 梢いかにと

塩 竃 浦
おしよする 浪よりかすむ 塩がまの うらの苫屋に 春たちにけり


本木昌造 自筆短冊
所蔵:平野ホール

possession_Hirano Hall
text_ROBUNDO Jiro Katashio & Kaori Oishi

プロフィール

本木昌造(もとぎ しょうぞう 1824-1875)

本木昌造(もとぎ しょうぞう 1824-1875)

幕末・明治初期に活躍した通詞、技術者。長崎生まれ。
特に西洋式活版印刷術の導入に尽力し、日本の近代活版印刷術の父とされる。
その豊富な知識と技術は、通詞や印刷の分野にとどまらず、化学・物理・数学・測量・航海術、造船、製鉄、架橋、教育、出版など多岐にわたり、旺盛な好奇心と果敢なチャレンジ精神で、わが国の近代化の礎を築いた人物のひとりである。